UPS(無停電電源装置)は必要?停電でサーバーが壊れる前に読む記事
「ブレーカーが落ちただけ」でサーバーが壊れる、を知っていますか
「先週、雷でブレーカーが落ちただけなのに、社内のNASが起動しなくなった」「夜中の瞬電のあとから、業務システムのデータベースが壊れて翌朝の業務が止まった」——情シスの相談窓口に、こういった電源トラブルにまつわる連絡が、毎年梅雨〜台風シーズンになると急に増えます。
多くの場合、原因は「停電そのもの」ではなく、停電によってサーバーやNAS、ストレージが書き込み途中のまま強制的に電源を落とされたことにあります。HDDやSSDは、書き込みが完了する前に電源が切れると、ファイルシステムやデータベースのインデックスが壊れることがあります。一度壊れたデータは、運が悪ければ業者に出しても復旧できません。
そして、こうしたトラブルが起きてはじめて多くの会社は「UPS(無停電電源装置)を入れておけばよかった」と気づきます。UPSは、停電や瞬電が起きた瞬間に内蔵バッテリーから電力を供給し、サーバーが安全にシャットダウンする時間を稼ぐための装置です。値段は数万円〜十数万円、しかし守れる損害は数百万円〜業務停止数日分。費用対効果はほぼ確実にプラスです。
それでも、UPSは「あった方がいいのは知っているけれど、後回しにされやすい」装置の代表格でもあります。
「うちは大きな停電なんてないし」が一番危ない
UPSが後回しにされる理由はだいたい同じです。「うちの地域は計画停電なんて何年もない」「サーバー室に空調も入っているし、特別な対策は不要」「クラウドに移したから関係ない」——どれも、半分は正しく、半分は危険です。
実は、サーバーを壊す電源トラブルの多くは「数秒以下の瞬電」「電圧の急な変動」「雷による誘導サージ」など、私たち人間が体感できないレベルの揺らぎです。事務所の照明が一瞬チカッとしただけ、エアコンが再起動しただけ——それだけで、サーバーは書き込みエラーを起こすことがあります。気象庁やニュースで「停電」と報じられないような電源変動は、年に何度も発生しています。
さらに、雷シーズンには「直撃ではない、近くに落ちただけ」の雷でも、配電線や通信線を伝って機器が破損する誘導雷サージが起こります。サーバーのマザーボード、NASのRAIDコントローラ、ネットワークスイッチが、ある朝突然動かなくなる——この被害は決して稀ではありません。
「クラウドに移したから大丈夫」も、半分は正しい話です。クラウド側のサーバーは保護されていますが、社内のクラウド接続を担うルーター、スイッチ、無線AP、社員のPCはすべて自社の電源で動いています。電源が落ちれば、クラウドにアクセスできなくなる時間が業務停止時間そのものになります。
つまり、サーバーをオンプレで持っている会社はもちろんのこと、クラウド主体の会社でも「ネットワーク機器を止めない」という意味でUPSは必要です。「うちは大きな停電がないから関係ない」は、トラブルが起きてから気づくケースが本当に多いのです。
この記事で、UPSの必要性と選び方を最短でつかめます
この記事では、UPS(無停電電源装置)について、情シスや経営者が「導入の判断」を下すのに必要な情報を最短ルートでまとめます。
具体的には、UPSが何を守るのか、どんな種類があるのか、自社のサーバー・NAS・ネットワーク機器にはどの容量のUPSが必要なのか、設置やバッテリー交換はどう運用するのか、そして「クラウドに移しているならどこまで必要か」までを順に解説します。
読み終わるころには、社内にUPSを置くべきポイントと、最低限必要なスペックが明確になり、見積もり依頼や稟議書に直接落とし込める状態になります。
UPSの基本構造と役割を理解する
UPS導入の判断と選定で押さえるべき3つのポイント
UPSの導入は、「とりあえず1台買って繋げる」ではうまくいきません。守る対象、必要な容量、運用ルールの3点を順に決めていく必要があります。ここでは、稟議に乗せるレベルで具体的に解説します。
① 何を守るかを決める:サーバー・NAS・ネットワーク機器の優先順位
まず最初にやるべきは、「停電したときに、何を守りたいか」のリストアップです。社内のIT機器をすべてUPSに繋ぐのは現実的ではないので、優先順位を付けます。
最優先で守るべきなのは、書き込みが行われているサーバー類です。ファイルサーバー、業務システムのデータベースサーバー、社内NAS、メールサーバー、Active Directoryのサーバーなど、データを保持している機器は、停電時に安全にシャットダウンできる状態でなければなりません。これらは「電源が落ちただけでデータが壊れる」リスクが最も高い装置です。
次に守るべきなのが、ネットワーク機器です。コアスイッチ、ルーター、無線AP、ファイアウォール——これらは止まると「クラウドに繋がらない」「社内のIP電話が使えない」「自宅勤務の社員がVPNで入れない」など、業務全体が止まります。クラウド中心の会社ほど、ネットワーク機器のUPS化が重要です。
逆に、社員一人ひとりのデスクトップPCをすべてUPSで守るのは、コストに見合いません。ノートPCならバッテリーがあるので、もともと瞬電には強い。デスクトップPCは「保存していない作業中のデータが消える」リスクはありますが、書き込み中のディスク破損は、サーバーほど深刻にはなりにくいです。重要なのは「データを集約している場所」を守ることです。
このリストアップだけで、UPSが「何台必要か」「どれくらいの容量が必要か」がだいたい見えてきます。
② 容量とランタイムを計算する:消費電力 × 必要な時間
UPSの容量は「VA(ボルトアンペア)」または「W(ワット)」で表されます。守りたい機器の合計消費電力を計算し、それを上回る容量のUPSを選びます。一般的には、機器の合計消費電力の1.5〜2倍くらいの容量を選ぶと、余裕を持って使えます。
ランタイム(バッテリーで動かせる時間)は、「シャットダウンに必要な時間」を満たすように選びます。サーバー1台を安全にシャットダウンするのに必要な時間は、機種にもよりますが3〜5分程度。複数台ある場合や、順番にシャットダウンしたい場合はもう少し必要です。多くの会社で導入されているUPSは、フル負荷で5〜15分動くタイプが標準的です。
「停電中も業務を続けたい」という要望もよく聞きますが、これはUPSの守備範囲ではありません。長時間の電力供給は、自家発電機の領域です。UPSはあくまで「安全にシャットダウンするための時間稼ぎ」と「瞬電を吸収する装置」と割り切るのが現実的です。
種類としては、安価な「常時商用給電方式」、停電時に瞬時に切り替わる「ラインインタラクティブ方式」、常にバッテリーから給電する「常時インバーター方式」の3種類があります。データセンター並みの安定電源が必要なサーバー以外は、ラインインタラクティブ方式で十分な場合がほとんどです。
③ 自動シャットダウンと運用ルールを決める:「繋いだだけ」では守れない
UPSを物理的に繋ぐだけでは、サーバーは守れません。UPSのバッテリーが切れる前に、サーバー側が自動でシャットダウンする仕組みを作っておく必要があります。
多くのUPSには、シャットダウン用のソフトウェアが付属しており、USBケーブルやLAN経由でサーバーと連携できます。停電が一定時間続いたら、UPSがサーバーに「シャットダウンしてください」と通知し、サーバーが自動で電源を落とす——この設定までやって、はじめてUPSは役に立ちます。
加えて、運用ルールも欠かせません。UPSのバッテリーは消耗品で、3〜5年ほどで交換が必要です。バッテリーが寿命を迎えたUPSは、いざというとき1秒も電力供給できません。「導入したけれど、5年間バッテリーチェックしていない」というUPSは、現場で本当によく見ます。
最低限、年に1回はバッテリーの状態を確認し、5年を目安に交換する、というルールを社内に決めておく必要があります。リモート監視機能付きのUPSなら、バッテリーの劣化や停電イベントをメール通知してくれるので、忘れにくい運用が組めます。
停電対策の運用フローと社内ルール
こんな会社は、いま見積もりを取るべきです
以下のいずれかに当てはまる会社は、UPS導入の判断をすぐにでも進めるべきです。
- 社内にファイルサーバー、NAS、業務システムのサーバーを置いている
- 雷シーズンや台風シーズンに、社内のネットワークが不安定になることがある
- クラウドに移行しているが、社内ネットワーク機器(ルーター・スイッチ・無線AP)が停電すると業務が止まる
- 以前、停電や瞬電でデータが壊れた・機器が故障した経験がある
- BCP(事業継続計画)の見直しを進めている
UPSは、入れていない状態で停電が起きてはじめて「あのとき入れておけば」と気づく装置です。しかも、データが壊れてからでは取り返しがつきません。導入コスト数万〜十数万円に対し、データ復旧の業者費用は数十万円〜、業務停止の損失は1日数十万〜数百万円。費用対効果の計算は、ほぼ全ての会社でプラスになります。
社内にIT担当者がいない、または兼任で手が回らないという会社の場合、UPSの選定や設置、運用ルールの設計まで一括で依頼できる外部のIT顧問サービスを利用するのも、現実的な選択肢です。当社の月額制自社DX推進部では、UPSをはじめとした社内インフラの保護策をまとめて棚卸しし、優先度の高いところから順番に対策していくサポートも行っています。
まとめ
UPSは中小企業の最低限のBCP対策
UPS(無停電電源装置)は、サーバーやNAS、ネットワーク機器を「停電や瞬電によるデータ破損・機器破損」から守るための、最も基本的なIT保護装置です。
導入を判断するために押さえるべきは、
- 何を守るかの優先順位(サーバー・NAS・ネットワーク機器が最優先)
- 容量とランタイムの計算(消費電力の1.5〜2倍、5〜15分稼働が目安)
- 自動シャットダウン設定とバッテリー交換ルール(3〜5年交換)
の3点です。「うちは停電がないから大丈夫」は、トラブルが起きてから後悔する典型パターン。雷シーズンを前に、いちど社内のサーバー・NAS・ネットワーク機器を棚卸しして、最低限の保護を入れておくことをおすすめします。
社内のIT機器の保護状態が分からない、稟議に乗せられる粒度の見積もりがほしい——そんな場合は、IT顧問サービスにいちど相談してみてください。停電対策だけでなく、社内インフラ全体のリスクを一気に整理できます。