Windows 10サポート終了|まだ移行してない企業が今やるべきこと
「まだ動いているから大丈夫」が一番危ない状態です
Windows 10の正式サポートは、2025年10月14日に終了しました。本記事を書いている2026年6月時点で、すでに終了から8ヶ月が経過しています。それでも、社内のPCの一部、あるいは大半がWindows 10のまま動き続けている——という会社は、決して珍しくありません。
実際、情シスや総務の現場では「重要な業務アプリが11に対応していない」「予算が次の年度まで通らない」「現場PCはまだ買い替えたばかりだから寿命まで使いたい」といった事情で、移行が後ろ倒しになっているケースが多くあります。日常業務には支障が出ていないため、優先度が下がり、別の案件に時間を取られているうちに、サポート終了から半年・1年と過ぎていく。これが、いま多くの中小企業で起きていることです。
ただ、「動いているから大丈夫」と「安全に使い続けられる」は、まったく別の話です。サポートが切れたOSは、新規に発見された脆弱性に対するセキュリティパッチが配布されません。攻撃者は、サポート切れOSを狙ったマルウェアやランサムウェアを継続的に開発しており、企業内の1台のWindows 10機が侵入口になって、ネットワーク全体が被害を受ける事例は、すでに国内でも複数報告されています。
しかも、サイバー保険・取引先のセキュリティ監査・補助金申請といった場面で、「サポート切れOSが社内で稼働していること」がマイナス評価の対象になり始めました。動いていることのコストが、見えないところで積み上がっている、というのが現状です。
「うちもそろそろ何とかしないと」と思いつつ動けない、その背景
Windows 10からの移行が滞っている企業の話を聞いていると、共通する要因がいくつか浮かび上がってきます。
第一に、業務アプリの動作確認に時間がかかること。中小企業が長年使ってきた基幹システム・専用業務ソフト・特定機器(医療機器・工作機械・印刷機など)の制御PCは、Windows 11での動作保証が取れていないものが多く、「動くかどうか試すこと」自体に工数とリスクが伴います。検証用の予備機を確保し、業務時間外に切り替えテストを行い、不具合があればベンダーに問い合わせる——というプロセスを真面目にやると、1拠点でも数週間〜数ヶ月かかります。
第二に、対応していないPCの存在。Windows 11は、TPM 2.0やCPU世代の要件が比較的厳しく、4〜5年以上前のPCの多くが要件を満たしません。そういったPCは「11にできない」ため、結局は買い替えが必要になり、予算規模が一気に膨らみます。社員1人あたりPC1台を入れ替えるだけでも、ノートPC・モニター・キーボード・周辺機器を含めて15〜25万円。社員50名規模なら、それだけで1000万円近い投資判断になります。
第三に、優先順位の問題。情シス担当者がいない、または兼任の総務担当者しかいない会社では、日々のヘルプデスク対応・契約更新・トラブル対応で手一杯になりがちです。「来月こそ着手しよう」と思いながら、半年・1年と過ぎていく状況は、責任感の問題ではなく、構造的なリソース不足が原因です。
これらの背景が複合的に絡み合い、「動いているから後回し」という意思決定が、組織として正当化されてしまう。だからこそ、いまから半年以内に着地点を作るための、現実的な行動計画が必要です。
「半年以内に着地」を可能にする3つのアプローチ
この記事では、Windows 10のサポート終了からすでに時間が経った状況で、これから移行を進める企業が取れる現実的な選択肢を整理します。「今すぐ全台Windows 11に揃える」という理想論ではなく、業務影響を最小化しながら、半年程度で安全な状態に着地するためのアプローチです。
具体的には、第一にWindows 11への通常移行をスムーズに進めるための準備、第二に対応外PCをどう扱うか(買い替え・ESU活用・隔離運用)、第三に業務アプリと現場機器の対応をどう進めるか、という3つの軸を中心に解説します。これに加えて、稟議を通すための予算組みのコツ、社員教育、リースとの兼ね合いまでをまとめます。
Windows 10からWindows 11への現実的な移行パス
いまから半年で進める移行ステップ
それでは具体的に、これから移行を進める場合の3つの提案を順に見ていきます。それぞれ、自社のPC構成・業務アプリ・予算事情に当てはめて検討してください。
提案1:まず「現状のPC台帳」を1週間で作る
移行計画の出発点は、社内にあるPCを正確に把握することです。意外なことに、社員数50名以上の会社でも、「いまPCが何台あり、それぞれのOSバージョン・購入時期・利用者・搭載アプリがどうなっているか」を即答できる会社は半分以下です。台帳が無いまま移行を進めると、必ず取りこぼしが発生し、後から「あのPCが残ってた」となります。
最初の1週間でやるべきは、以下の項目を埋めた一覧表の作成です。
- PC番号・機種名・購入時期・リース or 買い切り
- 利用者・所属部署・利用拠点
- 現在のOS(Windows 10 / 11 / その他)
- Windows 11対応可否(PC正常性チェックアプリで判定)
- 主要な業務アプリ(基幹・専用ソフト・周辺機器ドライバなど)
Microsoftが提供する「PC正常性チェック」アプリを各PCで実行すれば、Windows 11への対応可否は数分で判定できます。50台規模なら、社員に手順を共有して各自で実行してもらえば、半日〜1日で集計が終わります。
この台帳ができた瞬間に、「何台が通常移行できる、何台が買い替え必要、何台が業務アプリ次第」という分布が見え、初めて予算規模と優先順位を語れるようになります。台帳なしで稟議書を書こうとすると、必ずどこかで詰まります。
提案2:Windows 11対応外PCには、買い替え・ESU・隔離の3択を用意する
Windows 11非対応のPCをどう扱うかは、移行計画の最大の論点です。選択肢は実質3つあります。
- 買い替え:要件を満たすPCに置き換える。最も筋の良い選択肢ですが、コストが大きく出ます
- ESU(Extended Security Updates)の活用:Microsoftが提供する有償の延長セキュリティ更新を契約し、Windows 10のままセキュリティパッチを受け続ける。法人向けには年単位の契約があり、最大3年間延長可能。1年目より2年目、2年目より3年目と価格が上がる仕組みで、あくまで時間稼ぎ用の選択肢です
- ネットワーク隔離運用:特定の業務(工作機械の制御・古い専用機器との接続など)のみで使い、社内ネットワークやインターネットから隔離する。VLAN分離・物理的な分離・USBメモリ運用などで対応する
多くの会社にとって、現実解はこれらの組み合わせです。事務用PCはWindows 11対応機に順次買い替え、特殊用途で代替が効かないPCはESUを当面契約して安全に延命、外部接続が不要な制御PCはネットワーク隔離で割り切る——というハイブリッド構成が、現実的かつコスト最適になります。
ESUは「使ってはいけないもの」ではなく、「正しく使えば、移行を計画的に進めるための時間を買える保険」です。ただし、毎年価格が上がるため、ESUに頼り続ける運用は割高になります。あくまで2〜3年で完全移行する計画とセットで使うのが基本です。
提案3:業務アプリ・周辺機器の対応確認を、移行計画より先に動かす
PCの入れ替えそのものよりも、時間がかかるのが業務アプリと周辺機器の対応確認です。基幹システム・専用業務ソフト・複合機ドライバ・特定機器のドライバ・社内自作ツール——これらが新しい環境で動かないと、PC自体は新品になっても業務が止まります。
具体的には、以下の確認を並行で進めます。
- ベンダーが提供している主要業務アプリのWindows 11対応状況を、公式サイトやサポート問い合わせで確認
- 動作保証されていないアプリは、検証用のWindows 11機を用意して実際に動作テスト
- 複合機・スキャナ・特定機器のドライバが、Windows 11対応のものに更新可能か確認
- 社内で自作したExcelマクロ・Accessデータベース・VBScriptなどは、開発担当者または当時のベンダーに動作確認を依頼
このプロセスを後回しにすると、移行直前になって「特定の業務が動かない」「専用機器とつながらない」というトラブルが噴出し、結局PC入れ替えが延期になります。PCの調達計画と並行ではなく、その前に動かすのが安全です。
こうした一連の対応——PC台帳の作成・対応可否判定・業務アプリ確認・調達計画・予算組み・社員説明——を、社内の限られたリソースだけで進めるのが難しい場合、社外の情シス機能を月額で借りるという選択肢もあります。中小企業向けに伴走支援している月額制自社DX推進部のようなサービスを使えば、Windows移行のような重い案件を、外部の専門家と一緒に半年で完遂できる体制が組めます。
移行を進めるための実務ステップ
こんな方におすすめ
- 社内にWindows 10機がまだ多数残っているが、何台あるかも正確には把握できていない企業
- Windows 11への移行を始めたいが、対応外PCの扱いと業務アプリの動作確認で止まっている情シス担当者
- ESU契約を検討しているが、コストと長期計画の整合が取れずに迷っている企業
- サイバー保険の更新や取引先のセキュリティ監査で、サポート切れOSの存在を指摘され始めた経営者・総務担当者
サポート終了から半年以上が経過した今、攻撃者は「サポート切れOSを抱えたまま放置している企業」を明確にターゲットにしています。1台でも侵入されれば、社内ネットワーク全体が標的化される時代です。あと半年動けない理由を作るより、いま半年で動き切る計画を立てるほうが、結果的にコストもリスクも小さくなります。
まとめ
Windows 11への移行を完了し、安心して業務に集中できる姿
Windows 10のサポート終了から半年以上が経過した今、いま動けるかどうかで、企業のセキュリティと信用は大きく分かれていきます。最初の1週間でPC台帳を作り、対応可否の分布を可視化する。対応外PCには買い替え・ESU・隔離運用の3択をハイブリッドで適用する。業務アプリと周辺機器の確認を、PC調達と並行ではなく、その前に動かす——この3点を押さえれば、半年以内に安全な着地点まで持っていくことは十分可能です。
そして、移行が一段落したあとも、OSのライフサイクル管理・PC調達の長期計画・セキュリティ運用は、継続的に回し続ける必要があります。今回の移行を、単発の「やっつけ仕事」で終わらせるのではなく、3〜5年先まで見通したIT資産管理の起点として位置づけることが、次のサポート終了局面でも慌てない組織を作る最大の近道です。
まずは今週中に、社内PCの台数とOSバージョンを1枚の表にまとめるところから始めてみてください。台帳が1枚あるだけで、移行計画の解像度は劇的に上がります。