エンジニア採用に500万円使って失敗した社長が次にとった行動とは
「DXのために、エンジニアを採ろう」——その判断が500万円を溶かす
「これからはうちもDXを進めないと生き残れない。だからまず、社内にエンジニアを一人採用しよう」——そう決めて動き出した中小企業の社長から、半年後にこんな声を聞くことがあります。「結局、採用に500万円近く使ったのに、何も前に進まなかった」と。
内訳を聞くと、だいたいこうです。求人サイトへの掲載費に毎月数十万円。なかなか応募が来ないので人材紹介会社にも依頼し、ようやく採れた一人に年収分の手数料。さらに採用後の給与や社会保険、PCやツールの準備。そして数か月後、その人は「思っていた仕事と違う」と辞めていった——。気づけば、目に見える成果は何も残らないまま、まとまったお金だけが消えていた。
これは特別に運の悪い話ではありません。むしろ、DXを「まずは人を採ること」から始めようとした中小企業が、かなりの確率でぶつかる失敗です。問題は社長の経営判断が甘かったからではなく、そもそも「採用」という入り口の選び方に、構造的な落とし穴があるからです。
がんばって採ったのに続かない。それは社長のせいではない
「お金をかけて、誠実に採用活動をしたのに、なぜうまくいかないのか」——この悔しさは、実際に経験した社長にしか分からないものだと思います。けれど、その失敗にはちゃんと理由があります。
まず、中小企業がエンジニアを採るのは、そもそも構造的に不利です。優秀なIT人材は引く手あまたで、知名度の高い大手や、給与水準の高いIT企業に流れていきます。地方の、IT専業ではない中小企業が、同じ土俵で人材を奪い合っても、勝てる確率は高くありません。だから応募が集まらず、紹介会社に頼り、コストだけが膨らんでいきます。
そして、運よく採用できたとしても、次の壁が待っています。一人だけ採ったエンジニアは、社内に同じ仕事をする仲間がいません。技術的な相談相手もいなければ、評価できる上司もいない。やっている仕事が正しいのかどうか、本人すら確信が持てないまま孤立していきます。さらに、社長や現場から「あれもこれも」と幅広く頼られ、何でも屋になって疲弊する。これでは、よほど環境が良くない限り、長くは続きません。
つまり、採れないのも、採れても続かないのも、社長の努力不足ではなく、「中小企業がIT人材を一人だけ正社員で抱える」という形そのものに無理があるのです。500万円を溶かしてしまった社長の多くは、ここで初めてそのことに気づきます。
この記事で、「採用に頼らずDXを進める一手」が分かります
では、採用に失敗した社長は、その後どうすればいいのでしょうか。もう一度、同じように求人を出して、また数百万円を賭けて勝負するのでしょうか。
この記事では、実際に採用でつまずいた社長たちが「次にとった行動」を整理してお伝えします。結論を先に言えば、彼らが選んだのは「もう一度採用にチャレンジする」ことではなく、「そもそも一人を抱え込む前提を手放す」という発想の転換でした。
具体的には、なぜ採用以外の選択肢が現実的なのか、自社にエンジニアを抱えずにDXを前に進めるにはどんな方法があるのか、そして失敗した500万円を無駄にせず次の一手につなげるにはどう考えればいいのかを、実務目線で解説します。読み終わるころには、「人を採ること」と「DXを進めること」を、いったん切り離して考えられるようになっているはずです。
採用以外の選択肢でDXを前に進める
採用に失敗した社長が次にとった3つの行動
500万円を溶かした社長たちは、その経験から学び、次は違うアプローチを選びました。ここでは、彼らが実際にとった3つの行動を紹介します。どれも「一人のエンジニアを抱え込む」前提を捨てたところから始まっています。
① 「人を採る」のではなく「機能を借りる」に切り替えた
最初の行動は、発想の起点を「誰を雇うか」から「何を解決したいか」に戻したことです。
採用でつまずく社長の多くは、いつの間にか「優秀なエンジニアを採ること」自体が目的になっています。けれど本当に欲しかったのは、エンジニアという人ではなく、「社内の非効率をなくしたい」「紙とExcelの業務をなくしたい」「お客様対応をシステムで楽にしたい」といった成果のはずです。
そこに気づいた社長は、「人を一人雇う」のではなく、「必要なときに必要なIT機能を、外から借りる」という形に切り替えました。自社の業務を理解し、ツールの選定から導入、運用までを支援してくれる外部のパートナーと組むことで、正社員を一人抱え込まなくても、DXの実務はちゃんと前に進みます。採用にかかる求人費や紹介手数料、定着のリスクをまるごと回避しながら、欲しかった成果だけを手に入れる——この切り替えが、最初の一歩でした。
② 「一人にすべて」をやめ、チームの力を借りた
二つ目の行動は、IT業務を「社内の一人にすべて背負わせる」やり方をやめたことです。
そもそも、ひとくちに「エンジニア」と言っても、業務システムに強い人、インフラやネットワークに強い人、ツールの選定や社内調整がうまい人と、得意分野はバラバラです。中小企業が直面するIT課題は幅広いのに、それを採用した一人だけでカバーしようとするから無理が生じ、本人も疲弊します。
そこで、複数の専門領域を持つ外部チームに、必要な部分だけを切り出して頼るやり方に変えた社長がいます。インフラの相談はインフラに強い人に、業務改善はその領域が得意な人に。一人の正社員では到底カバーできない幅を、チームの力で埋めるのです。社内に一人で孤立する人を作らずに済むので、「採ったのに続かない」という失敗そのものが起きなくなります。
③ 「丸投げ」ではなく「伴走」で社内に知見を残した
三つ目の行動は、外部に頼るときに「丸投げ」ではなく「伴走」を選んだことです。
採用に失敗した社長のなかには、「もう自社では無理だ」と、すべてをベンダーに丸投げしてしまう人もいます。しかし、それでは中身が社内に何も残らず、いつまでも外部に依存し続けることになります。これでは、形を変えた別の失敗です。
うまくいった社長は、外部の力を借りつつも、その過程で自社の担当者が少しずつ理解を深められる「伴走型」の関係を選びました。専門家と一緒に進めながら、「なぜこのツールなのか」「どう運用すればいいのか」を社内に蓄積していく。こうすれば、外部パートナーは"代わりにやってくれる人"ではなく、"社内のIT力を育ててくれる存在"になります。最初から優秀なエンジニアを一人で採ろうとして失敗するより、外部と伴走しながら社内に少しずつ知見を貯めていくほうが、結果的にずっと現実的で、長続きするのです。
一人に頼らずチームで伴走する
こんな社長は、採用以外の選択肢を検討すべきです
以下のいずれかに当てはまる社長は、もう一度採用にチャレンジする前に、いちど立ち止まって別の道を検討することをおすすめします。
- エンジニア採用に求人費や紹介料をかけたが、採れなかった・続かなかった経験がある
- DXを進めたいが、社内にIT人材を一人で抱える余裕や自信がない
- 採用した人を評価したり、育てたりできる人材が社内にいない
- 業務改善やシステム導入を「相談しながら一緒に進めてくれる相手」が欲しい
- まとまった採用コストより、毎月一定額で予算化できる形のほうが助かる
採用は、決して唯一の正解ではありません。むしろ中小企業にとっては、一人を抱え込むことのリスクとコストのほうが大きいケースが多いのです。500万円を溶かした経験は、痛いものですが、「採用ありきだった発想」を手放すきっかけになるなら、決して無駄にはなりません。
そうした「人を抱えずにDXを前に進めたい」というニーズに応えるのが、当社の月額制自社DX推進部です。正社員のエンジニアを一人採用する代わりに、自社のDX推進部門を月額制で持つようなイメージで、業務の困りごとの整理からツール導入、運用まで、複数の専門家がチームで伴走します。採用にかかる求人費や定着リスクを負わずに、欲しかった成果に向けて動き出せます。
まとめ
採用に頼らずDXを前に進める社長
エンジニア採用に500万円を使って失敗した社長が次にとった行動は、「もう一度、採用にチャレンジする」ことではありませんでした。彼らが選んだのは、「一人を抱え込む前提そのものを手放す」という発想の転換です。
具体的には、次の3つでした。
- 「人を採る」のではなく「機能を借りる」に切り替えた(欲しいのは人ではなく成果)
- 「一人にすべて」をやめ、チームの力を借りた(孤立も疲弊も起きない形にする)
- 「丸投げ」ではなく「伴走」で社内に知見を残した(外部依存ではなく社内のIT力を育てる)
人材不足のなかで、中小企業がIT人材を一人だけ正社員で抱えるのは、想像以上に難しく、リスクの高い選択です。採用がうまくいかなかったのは、社長の努力が足りなかったからではありません。だからこそ、次は「採ること」と「DXを進めること」を切り離して、自社に合った現実的な一手を選んでみてください。失敗した500万円の経験は、その判断を変える、いちばん確かな材料になります。
まずは、自社が本当に解決したい困りごとをひとつ言葉にすることから始めてみましょう。その上で、採用以外の選択肢も含めて相談できる相手を見つければ、DXは「人が採れないから止まる」ものではなくなります。