月額10万円のDX支援 vs 年収600万円の社内SE|5年間の総コストで比較
「社内SEを1人雇うか、外部のDX支援を使うか」——経営者が一度は悩む選択
「うちもそろそろ、ITに詳しい人を社内に置いたほうがいいのでは」
社員数20〜100名規模の中小企業で、こうした議論が経営会議に上がるのは珍しいことではありません。社内のPCトラブル対応、SaaSの導入・管理、業務フローの改善——IT周りの課題は年々増え続けているのに、対応できる人材がいない。
そこで多くの企業が検討するのが、この2つの選択肢です。
- 年収600万円で社内SE(情報システム担当)を採用する
- 月額10万円の外部DX支援サービスを利用する
「社内にいてくれたほうが安心」「外部に頼むと高くつくのでは?」——感覚的にはそう思うかもしれません。しかし、5年間の総コストを正しく計算すると、見える景色はまったく変わります。
さらに問題なのは、コストだけでは測れないリスクの存在です。ひとり情シス体制の脆弱さ、業務知識の属人化、そして突然の退職リスク。これらを織り込まずに判断すると、数年後に「こんなはずじゃなかった」と後悔することになりかねません。
中小企業のIT担当問題、あなただけが悩んでいるわけではありません
「IT人材を採りたくても、そもそも応募が来ない」 「やっと採用できたのに、2年で辞めてしまった」 「今のIT担当が休んだら、社内の誰もシステムのことがわからない」
こうした悩みを抱えているのは、あなたの会社だけではありません。
IPA(情報処理推進機構)の「IT人材白書」によれば、IT人材の不足を感じている企業は全体の約9割に上ります。特に中小企業においては、採用市場でも大手との競合に勝てず、条件面でも折り合わないケースがほとんどです。
そして、苦労して採用できたとしても待ち受けるのが**「ひとり情シス」問題**。IT担当が1人しかいない体制では、その人に業務知識が集中し、属人化が急速に進みます。ツールの管理方法、ベンダーとのやり取り、社内ネットワークの設定——すべてがその人の頭の中にだけある状態です。
もしその担当者が体調を崩したら? 転職を決めたら?
退職リスクは、ひとり情シス体制においては経営リスクそのものです。引き継ぎが不十分なまま退職されれば、業務は混乱し、復旧にかかるコストは採用コストの何倍にも膨れ上がります。
この構造的な問題を理解したうえで、改めてコストを比較してみましょう。
この記事では「見えるコスト」と「見えないコスト」の両面から徹底比較します
この記事では、月額10万円のDX支援サービスと年収600万円の社内SE採用について、5年間の総コストを以下の観点から比較します。
- 給与・報酬などの直接コスト
- 採用費・教育費・福利厚生などの間接コスト
- 退職・属人化・空白期間などのリスクコスト
数字で見れば、どちらが自社に合っているかが明確になります。
コスト比較の全体像
5年間の総コストを徹底比較する
社内SE採用の5年間コスト
まず、年収600万円の社内SEを正社員として採用した場合の5年間コストを試算します。
直接コスト(人件費)
| 項目 | 年間コスト | 5年間合計 |
|---|---|---|
| 基本給与 | 600万円 | 3,000万円 |
| 社会保険料(会社負担分 約15%) | 90万円 | 450万円 |
| 賞与(年2回・計2ヶ月分と仮定) | 100万円 | 500万円 |
| 小計 | 790万円 | 3,950万円 |
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間接コスト
| 項目 | コスト |
|---|---|
| 採用費(エージェント経由の場合) | 150〜200万円 |
| PC・ライセンス・環境整備 | 50〜80万円 |
| 研修・資格取得支援 | 年間20〜30万円 × 5年 = 100〜150万円 |
| マネジメント工数(上長の時間) | 年間50万円相当 × 5年 = 250万円 |
| 小計 | 約550〜680万円 |
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リスクコスト(5年間で1回退職が発生した場合)
中小企業のIT人材の平均勤続年数は約3〜4年と言われています。5年間で少なくとも1回は退職・再採用が発生する前提で試算します。
| 項目 | コスト |
|---|---|
| 再採用費 | 150〜200万円 |
| 引き継ぎ期間の生産性低下(3ヶ月) | 150万円相当 |
| 空白期間の業務停滞(1〜2ヶ月) | 100万円相当 |
| 属人化した業務の再構築 | 100〜200万円 |
| 小計 | 約500〜650万円 |
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社内SE採用の5年間総コスト:約5,000〜5,280万円
月額10万円のDX支援の5年間コスト
次に、月額10万円の外部DX支援サービスを利用した場合です。
| 項目 | 月間コスト | 5年間合計 |
|---|---|---|
| 月額利用料 | 10万円 | 600万円 |
| 初期導入・設定費(発生する場合) | — | 0〜50万円 |
| 追加対応費(スポット依頼) | — | 0〜100万円 |
| 合計 | — | 約600〜750万円 |
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比較まとめ
| 項目 | 社内SE採用 | DX支援(月額10万円) |
|---|---|---|
| 5年間の直接コスト | 約3,950万円 | 約600万円 |
| 間接コスト | 約550〜680万円 | 0〜50万円 |
| リスクコスト | 約500〜650万円 | ほぼ0円 |
| 5年間総コスト | 約5,000〜5,280万円 | 約600〜750万円 |
| 差額 | — | 約4,250〜4,630万円おトク |
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コスト差は約7〜8倍。この数字を見て「そんなに違うの?」と驚かれる方も多いでしょう。
もちろん、社内SEがいることで得られる「即座の対応力」「社内文化の理解」といったメリットは確かにあります。しかし、ひとり情シス体制ではそのメリットすら属人化リスクに転じるのが現実です。
コスト以外で見落とせない3つの比較ポイント
数字だけでは判断できない要素も整理しておきましょう。
1. ひとり情シスの脆弱性
社内SEが1人の場合、その人が病欠・有給・退職した瞬間にIT対応力はゼロになります。一方、外部DX支援はチーム体制で提供されるため、担当者の不在が業務に影響しません。
2. 属人化のリスク
社内SEに業務が集中すると、「あの人しか知らない」状態が必ず生まれます。外部DX支援では、ドキュメント整備や業務の標準化がサービスに組み込まれていることが多く、属人化しにくい仕組みが最初から用意されています。
3. 退職リスクへの耐性
社内SE1人体制では、退職=業務知識の喪失です。外部サービスであれば、ナレッジはチーム内で共有されており、担当交代があっても情報は引き継がれます。
コスト以外の比較ポイント
「でも、外部に任せて大丈夫?」という不安への回答
ここまで読んで、こう思われた方もいるかもしれません。
「コストが安いのはわかった。でも、外部の人間にうちの業務がわかるのか?」
これはもっともな疑問です。そして、この不安こそが外部DX支援を選ぶ際の最も重要な判断基準になります。
単にITの作業を代行するだけの「外注」では、確かに自社業務への理解は深まりません。しかし、月額制で継続的に伴走するタイプのDX支援であれば、毎月のやり取りを通じて業務理解が蓄積されていきます。
たとえば、月額制で自社専属のDX推進チームとして機能するサービスであれば、外部でありながら社内の事情を熟知したパートナーとして、中長期的にIT体制を支えることが可能です。
重要なのは、「外注か内製か」の二択ではなく、自社の規模とフェーズに合った最適な体制を選ぶことです。
こんな企業は、外部DX支援を検討すべきです
- IT担当が1人(またはゼロ)で、ひとり情シス状態になっている
- 特定の社員にITの知識が集中し、属人化が進んでいる
- IT担当の退職リスクを考えると不安だが、対策ができていない
- 社内SEの採用を検討したが、応募が集まらない・条件が合わない
- IT投資は必要だと感じているが、年間数百万円の人件費は重い
1つでも当てはまるなら、まずはコストシミュレーションだけでもしてみる価値があります。
特に、ひとり情シスや属人化の問題は時間が経てば経つほど深刻化します。IT担当者が退職届を出してから慌てて動き出すのでは遅すぎます。今の体制が持続可能かどうか、冷静に見直すタイミングは——今です。
まとめ
まとめ
月額10万円のDX支援と年収600万円の社内SE——5年間の総コストで比較すると、その差は約4,000万円以上にもなります。
しかし、本当に重要なのはコスト差だけではありません。
- ひとり情シス体制では、1人の不在が全社のIT機能停止を意味する
- 属人化が進めば進むほど、その人への依存度は増し、組織の脆弱性は高まる
- 退職リスクは「もしも」ではなく「いつ起きるか」の問題
これらの構造的リスクまで含めて考えたとき、外部DX支援という選択肢は、単なるコスト削減ではなく「経営の安定化」への投資と言えます。
まずは、自社のIT体制の現状を棚卸しするところから始めてみませんか? 社内SEの採用が本当に最適なのか、外部支援で十分なのか——判断材料を揃えることが、最初の一歩です。