ITトラブルで業務が止まる「ダウンタイムコスト」を計算してみた
「システムが動かない」その1時間、いくらの損失か把握していますか?
「サーバーが落ちた」「基幹システムにログインできない」「メールが送受信できない」
こうしたITトラブルは、どの企業でも起こりうる日常的なリスクです。しかし、その間に発生している損失額を正確に把握している経営者は、意外と少ないのではないでしょうか。
「復旧すれば問題ない」「たかが数時間のこと」——そう考えていると、見えないところで大きなコストが積み重なっていきます。
実は、中小企業でもITトラブルによる年間損失は数百万円規模になることがあります。そして、そのコストは適切な対策を講じることで、大幅に削減できる可能性があるのです。
経営者なら誰もが経験する「あの焦り」
「今日中に納品しないといけないのに、システムが動かない」
「月末の請求処理が止まって、入金サイクルに影響が出そうだ」
「お客様からの問い合わせに対応できず、クレームになってしまった」
こうした経験、一度はあるのではないでしょうか。
ITトラブルが発生したとき、現場は復旧作業に追われ、経営者は「いつ直るのか」とやきもきする。そして復旧後は安堵感から、「結局いくら損したのか」を振り返ることなく、日常業務に戻っていく——。
これは多くの企業で見られるパターンです。しかし、この「振り返らない」習慣が、同じトラブルの繰り返しや、対策投資の判断ミスにつながっているのです。
ダウンタイムコストを「見える化」すれば、正しい投資判断ができる
本記事では、ITトラブルによる業務停止時間(ダウンタイム)が、具体的にいくらのコストになるのかを計算する方法をお伝えします。
この「ダウンタイムコスト」を把握することで、以下のことが可能になります。
- IT投資の費用対効果を定量的に説明できる
- リスクヘッジのための予算確保を経営会議で通しやすくなる
- トラブル発生時の影響範囲を即座に把握できる
- 「なんとなく不安」を「具体的な数字」に変換できる
経営判断において、「数字で語れる」ことは大きな武器になります。
ダウンタイムコストの見える化
ダウンタイムコストの計算方法
基本の計算式
ダウンタイムコストを算出する基本的な計算式は、以下のとおりです。
ダウンタイムコスト = ダウンタイム時間 × 時間あたり損失額
シンプルですが、「時間あたり損失額」の算出がポイントになります。これを正確に把握することで、リアルな損失額が見えてきます。
時間あたり損失額の内訳
時間あたり損失額は、主に以下の要素で構成されます。
1. 人件費ロス
業務が停止している間も、従業員の給与は発生し続けます。
計算式:
人件費ロス = 影響を受ける従業員数 × 平均時給
例:
- 影響を受ける従業員:30名
- 平均時給:2,500円(年収500万円÷年間労働2,000時間)
- 1時間あたり人件費ロス:75,000円
2. 売上機会損失
システム停止中に得られなかった売上は、そのまま損失となります。
計算式:
売上機会損失 = 1時間あたり平均売上 × 影響係数
例:
- 年間売上:3億円
- 営業時間:年間2,000時間
- 1時間あたり平均売上:150,000円
- システム依存度(影響係数):80%
- 1時間あたり売上機会損失:120,000円
3. 復旧対応コスト
IT担当者やベンダーの緊急対応費用も見逃せません。
計算式:
復旧対応コスト = 対応人員 × 時給 × 係数(休日・深夜は1.25〜1.5倍)
例:
- IT担当者2名 × 時給3,000円 = 6,000円
- 外部ベンダー緊急対応:10,000円/時間
- 1時間あたり復旧対応コスト:16,000円
4. 間接的損失
定量化しにくいですが、以下のコストも考慮が必要です。
- 顧客信頼の低下:リピート率への影響
- ブランドイメージの毀損:SNSでの拡散リスク
- 従業員モチベーションの低下:残業対応による疲弊
- 取引先への違約金・ペナルティ
これらは、売上機会損失の10〜30%程度を目安に加算することが一般的です。
合計すると?
上記の例を合計すると、1時間あたりのダウンタイムコストは約23万円になります。
| 項目 | 1時間あたり |
|---|---|
| 人件費ロス | 75,000円 |
| 売上機会損失 | 120,000円 |
| 復旧対応コスト | 16,000円 |
| 間接的損失(20%加算) | 24,000円 |
| 合計 | 235,000円 |
← 横にスクロールできます →
つまり、4時間のシステム障害で約100万円の損失が発生する計算です。
ダウンタイムコスト計算ステップ
年間ダウンタイムコストのシミュレーション
では、年間でどれくらいのコストになりうるのでしょうか。
一般的な中小企業では、大小のITトラブルを合わせると、年間で20〜50時間程度のダウンタイムが発生していると言われています。
| 年間ダウンタイム | 年間損失額(時給23.5万円の場合) |
|---|---|
| 20時間 | 470万円 |
| 30時間 | 705万円 |
| 50時間 | 1,175万円 |
← 横にスクロールできます →
「うちはそんなにトラブル起きていない」と思われるかもしれません。しかし、以下のような「小さなダウンタイム」も積み重なると大きな損失になります。
- PCの起動が遅く、毎朝5分ロス × 50人 × 250日 = 年間1,041時間
- ネットワーク遅延で1日10分の作業ロス × 50人 × 250日 = 年間2,083時間
- 月1回のサーバートラブルで2時間停止 × 12回 = 年間24時間
大規模障害だけでなく、日常的な「小さな非効率」の積み重ねが、実は最大のコスト要因であることも少なくありません。
ダウンタイムコストを削減するための3つのアプローチ
コストを可視化したら、次は削減策を検討しましょう。
アプローチ1:予防保守の強化
トラブルを未然に防ぐことが、最もコスト効率の良い対策です。
- 定期的なシステム点検:月次・四半期での健全性チェック
- アップデートの計画的実施:セキュリティパッチの適用遅延をなくす
- 監視ツールの導入:異常を早期検知し、障害を未然に防ぐ
予防保守にかかるコストと、ダウンタイムコストを比較すれば、投資判断は明確になります。
アプローチ2:復旧時間の短縮(RTOの改善)
障害が発生しても、復旧までの時間を短縮できれば損失は最小化できます。
- バックアップ体制の整備:復旧手順の明確化とテスト実施
- 冗長化構成の検討:クラウド活用による可用性向上
- インシデント対応フローの整備:誰が何をするか明確に
アプローチ3:IT体制の見直し
根本的には、ITを適切に管理・運用できる体制が必要です。
- 専任IT担当者の配置または外部パートナーの活用
- 定期的なIT戦略の見直し
- 従業員のITリテラシー向上
中小企業の場合、専任のIT担当者を置くことが難しいケースも多いでしょう。そのような場合は、月額制で自社のDX推進部のように機能するサービスを活用することで、コストを抑えながら専門的なIT支援を受けることも選択肢の一つです。
こんな企業はダウンタイムコストの可視化が急務です
以下に当てはまる場合は、早急にダウンタイムコストを計算し、対策を検討することをおすすめします。
- 基幹システムに業務が大きく依存している
- 過去1年で複数回のシステム障害を経験した
- IT担当者が他業務と兼任している
- 「なんとかなっている」状態が続いている
- IT投資の優先順位が決められない
「何も起きていないから大丈夫」ではなく、**「何か起きたときにいくら損するか」**を把握しておくことが、経営者としてのリスクマネジメントです。
競合他社がITトラブルで機会損失を出している間に、自社が安定稼働していれば、それは競争優位にもつながります。
まとめ:ダウンタイムコストの可視化が経営を強くする
まとめ
本記事では、ITトラブルによるダウンタイムコストの計算方法を解説しました。
ポイントをまとめると:
- ダウンタイムコスト = 停止時間 × 時間あたり損失額
- 時間あたり損失額は「人件費」「売上機会損失」「復旧対応」「間接損失」の合計
- 中小企業でも年間数百万円〜1,000万円超の損失リスクがある
- 小さな非効率の積み重ねも見逃せない
- コストを可視化すれば、IT投資の判断基準が明確になる
「コスト削減」と「リスクヘッジ」は、経営における永遠のテーマです。ITトラブルによる損失を「仕方ない」で終わらせず、数字で把握し、戦略的に対策を打つことが、これからの経営には求められます。
まずは自社のダウンタイムコストを計算してみてください。その数字が、次の一手を決める判断材料になるはずです。
自社のダウンタイムコストを計算してみたい、IT体制の見直しを検討したいという方は、お気軽にご相談ください。 現状のIT環境を診断し、コスト削減とリスク軽減の両面から最適な改善策をご提案いたします。