NAS vs クラウドストレージ|社内ファイル共有の最適解を費用で比較

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NAS vs クラウドストレージ|社内ファイル共有の最適解を費用で比較NAS vs クラウドストレージ|社内ファイル共有の最適解を費用で比較

「結局、NASとクラウドのどっちが安いの?」が答えられない理由

「社内のファイルサーバーが老朽化してきた」「テレワークでファイル共有がうまく回らない」「容量がいっぱいで、誰も整理しない」——こうした課題を抱えている情報システム担当者の方は、決して少なくありません。

選択肢として浮上するのは、NAS(ネットワーク接続型ストレージ)の更新、もしくはクラウドストレージへの移行、あるいはその両方の併用です。ところが、いざ比較しようと見積もりを取り始めると、検討は途端に難航します。

NASは初期費用がまとまった額で発生する一方、月額はほぼかかりません。クラウドは初期費用が小さい反面、毎月のサブスクリプション費用が積み上がります。単純な金額の比較では、3年スパンと5年スパンで答えが変わってしまうのです。

さらに「容量を超えたら追加できるのか」「社外からアクセスするにはどうするのか」「バックアップは別途必要なのか」「ランサムウェアにやられたらどうなるのか」など、考えるべき軸が多すぎて、表計算ソフトを開いたまま手が止まる——そんな状況は、多くの企業で起きています。

「とりあえずクラウド」「やっぱりNAS」どちらも一理あって、決め手がない

最近のIT記事を見ると、「これからはクラウドの時代」というトーンが目立ちます。一方で、現場のベテラン社員からは「やはり社内に置いておくほうが安心だ」という声も根強くあります。どちらにも、それぞれの理由があります。

クラウドストレージ推進派の言い分は、こうです。サーバー機器を社内に置かなくて済む。バックアップや冗長化はサービス側でやってくれる。社外からも当たり前にアクセスできる。働き方の多様化に合っている——確かに、その通りです。

一方、NAS派の言い分も、もっともなものです。月額が積み上がらない。社内のネットワーク内で完結するから速い。データの所在が物理的に分かっている安心感がある。容量単価で見ると、クラウドより圧倒的に安い——これも、その通りです。

問題は、どちらの主張にも一理あるため、議論が「考え方の違い」で終わってしまうことです。経営層からは「で、結局いくらかかるの?」「うちにはどっちが合うの?」と問われ、明確に答えられない——ここで止まっている企業は、想像以上に多いのです。

この記事で、5年スパンの総コストと判断軸が見える

本記事では、NASとクラウドストレージを「初期費用」「月額費用」「運用工数」「セキュリティ」「拡張性」の5つの軸で比較し、10人・30人・50人規模のモデルケースで5年間の総コストを試算します。

結論を先に示すと、「規模と働き方によって最適解は変わる」「多くの中小企業ではハイブリッド構成が現実解になる」というのが本稿の立場です。一方に決めつけるのではなく、自社の条件に合わせて選び分けるための判断材料を提供します。

NAS vs クラウドストレージの費用比較NAS vs クラウドストレージの費用比較

読み終えるころには、「自社にとってNASとクラウド、そしてその併用のどれが合うのか」を、社内の稟議や経営層への説明で根拠を持って語れる状態になっているはずです。

5年総コストで見るNAS vs クラウド——3つの規模別シミュレーション

ここからは、具体的な数字を使って比較していきます。価格は2026年時点の一般的な相場感に基づくもので、製品や契約条件により上下しますが、傾向をつかむ材料としてご活用ください。

比較1:10人規模・データ容量2TBのケース

10人規模のオフィスで、共有データの総量が2TBほどの場合を考えます。

NASを採用する場合、ビジネス向けのNAS本体(4ベイクラス、HDD含む)で20万円前後、UPS(無停電電源装置)と外付けバックアップHDDで5万円前後、設置・初期設定費用で5万円前後、合計で30万円ほどの初期投資が発生します。月額は電気代と保守を合わせて月2,000円程度、HDD故障時の交換費用として年間2〜3万円を見込みます。

5年間の総額を計算すると、初期30万円+月額12万円(2,000円×60か月)+HDD交換費用15万円=約57万円になります。

一方、クラウドストレージを採用する場合、Microsoft 365 BusinessやGoogle Workspaceなどのオフィスソフト込みのプランを使うと、1ユーザーあたり月額1,500〜2,000円が一般的です。10ユーザー×月額1,800円とすると、年間21.6万円、5年で約108万円となります。

数字だけ見るとNASのほうが約半額ですが、クラウドの場合はOffice製品やメール、ビデオ会議も含まれている点を加味する必要があります。純粋に「ストレージ機能だけ」で比較するなら、クラウドストレージ単体プラン(1ユーザーあたり月額500〜1,000円程度)を使うことになり、5年で30〜60万円とNASに近い水準になります。

比較2:30人規模・データ容量10TBのケース

30人規模になると、扱うデータ量も増え、運用負荷も無視できなくなります。

NASの場合、ラック型のビジネスNAS(6〜8ベイ、HDD込み)で50〜80万円、UPSやバックアップ機器で10万円、設置費用で10万円、初期投資は合計70〜100万円。月額の保守と電気代で月5,000円、HDD交換と容量増設で年間5〜10万円。5年総額は約130〜170万円になります。

クラウドの場合、30ユーザー×月額1,800円で年間64.8万円、5年で約324万円。容量単価でも、企業向けクラウドの追加容量は1TBあたり月額1,000〜2,000円が相場で、10TB分を追加で確保すると年間12〜24万円が上乗せされます。

ここでは、NASのほうが純粋なコストでは優位に見えます。ただし、後述する「運用工数」「社外アクセス対応」「ランサムウェア対策」を加味すると、見え方が変わってきます。

比較3:50人規模・データ容量30TBのケース

50人規模で30TBを超えると、NASも本格的なものが必要になり、初期投資は急に膨らみます。

ハイエンドNAS(ラックマウント型、SSD混在、RAID6構成)で100〜150万円、UPSやバックアップで20〜30万円、ネットワーク機器の更新も含めて20万円、初期投資は150〜200万円。月額の保守、電気代、HDD交換、容量増設を合わせて年間15〜25万円。5年総額は約225〜325万円となります。

クラウドの場合、50ユーザー×月額2,000円で年間120万円、5年で600万円。さらに30TB分の容量追加で年間36〜72万円。5年総額は約780〜960万円と、NASの約3倍に膨らみます。

ただし、この規模になるとファイルサーバーの運用工数(管理者の人件費)や、バックアップ運用、災害対策の重要度が上がります。そこまで含めて比較すると、評価は単純ではなくなります。

費用以外で見逃せない4つの判断軸

ここまで金額だけで比較してきましたが、実際の判断には他の軸も欠かせません。むしろ、金額より重要になるケースも珍しくありません。

軸1:社外アクセスと働き方への対応

テレワークや出張先からのアクセスを前提に運用するなら、クラウドストレージは何の追加投資もなくこれを実現します。一方、NASで社外アクセスを実現するには、VPN環境の整備や、メーカー独自のリモートアクセス機能の利用が必要です。VPNルーターや認証基盤を別途用意すると、初期費用で10〜30万円、月額の保守でも数千円〜が追加で発生します。

「全社員が社内で働いている」「社外アクセスはほぼ不要」という前提があるなら、NASの単純コスト優位はそのまま活きます。しかし、現実には「営業は外回り中心」「経理だけ社内」「テレワークが週1〜2日」など、ハイブリッドな働き方が一般的です。この場合、NAS単体での運用は次第に重荷になっていきます。

軸2:運用工数とトラブル時の対応

NASは社内に物理的な機器がある以上、HDD故障、停電、設定ミス、容量逼迫といったトラブルに、誰かが対応する必要があります。社内に詳しい担当者がいれば対応できますが、いない場合は外部のIT業者に都度依頼することになります。年間数回のトラブル対応で、10万円単位の出費になることも珍しくありません。

クラウドは、ハードウェア起因のトラブル対応がほぼゼロになります。容量追加もダッシュボードからクリック数回。担当者の負担が大幅に軽くなる分、その時間を本業や別のDX施策に回せます。

「情シス担当が片手間で兼務している」「IT専任者がいない」という中小企業ほど、この運用工数の差は重く効いてきます。

軸3:セキュリティとランサムウェア対策

ランサムウェア被害が深刻化する中で、NASの選定基準も変わってきました。ネットワーク上で常時アクセス可能なNASは、ランサムウェアに感染すると共有フォルダ全体が暗号化される危険があります。これを防ぐためには、別系統のバックアップ、世代管理、書き込み制限機能などを組み合わせる必要があります。

クラウドストレージは、サービス側がランサムウェア対策機能(ファイル復元、版管理、不審なアクティビティ検知)を提供しているケースが増えています。基本機能の範囲内で、ある程度の保護が得られます。ただし、ユーザーアカウントが乗っ取られればクラウドストレージのファイルも暗号化される事例があり、万全ではありません。

どちらを選ぶにせよ、別系統のバックアップ(イミュータブルバックアップ、別クラウドへのコピーなど)の検討は避けて通れません。

軸4:将来の容量拡張と廃棄コスト

NASは購入時のスペックで上限が決まり、容量が逼迫すると本体ごと買い替えになることがあります。HDDの個別交換で対応できる範囲は限られ、5〜7年で寿命を迎えれば、廃棄費用と廃棄時のデータ消去費用が別途発生します。

クラウドは、容量追加はクリックで完結し、契約終了時にデータをダウンロードして退会すれば、廃棄費用はゼロです。この「終わるときの軽さ」は、将来の事業環境変化を考えると見過ごせない要素です。

「結局、何を選ぶべきか」——ハイブリッド構成という現実解

ここまでの比較を踏まえて、規模・働き方別の推奨パターンを整理します。

パターン1:10人前後、社内勤務中心 → NAS単体+クラウドバックアップ

社員数が少なく、社外アクセスもほぼ発生しないなら、NAS単体での運用が最も費用対効果に優れます。ただし、ランサムウェア対策と災害対策として、月数千円のクラウドバックアップを併用するのが定石です。NAS本体30万円+月額バックアップ5,000円で、5年総額は約60万円。10人規模なら、これがコスパ最強の構成です。

パターン2:30人前後、ハイブリッドワーク → クラウドメイン+NAS補助

30人規模になると、ハイブリッドワークへの対応や運用工数の軽減が重要になります。日常業務はクラウドストレージ(Microsoft 365やGoogle Workspace)で行い、大容量ファイルや過去アーカイブはNASに置く「クラウドメイン+NAS補助」が現実解です。月額負担は増えますが、運用工数とセキュリティ対策費を考えれば、十分に元が取れます。

パターン3:50人以上、大容量データ → NASメイン+クラウド連携

50人を超え、扱うデータ量が30TBを超えてくると、純粋なクラウド運用は費用面で厳しくなります。日常的に扱う共有データはNASに置きつつ、社外アクセスが必要なデータや、最新のファイルのみクラウドに同期する「NASメイン+クラウド連携」が向いています。NASとクラウドストレージの自動同期機能を使えば、両方のメリットを享受できます。

NASとクラウドの併用構成図NASとクラウドの併用構成図

共通の必須要件:バックアップは必ず別系統で

どのパターンを選んでも、バックアップは別系統に取る——これは譲れない要件です。NASならクラウドへ、クラウドなら別クラウドや社内NASへ。「3-2-1ルール」(3つの複製、2種類のメディア、1つはオフサイト)は、いまも有効な指針です。

なお、こうしたファイル共有基盤の見直しは「単に機器を入れ替える」だけで終わらせず、社内のフォルダ運用ルール、アクセス権の設計、ライフサイクル管理(古いファイルの自動アーカイブ)まで含めて見直すと、効果が何倍にも広がります。

社内に専任のIT担当を置きづらい中小企業の場合、こうした検討と運用設計をまるごと伴走してくれる外部パートナーの存在が有効です。たとえば月額制自社DX推進部のようなサービスを使えば、現状ヒアリングから機器選定、移行支援、運用ルール作りまでを月額制で任せられるため、人手不足の情シスでも腰を据えてストレージ見直しに取り組めます。

こんな企業は、いま見直しを始めるべき

  • ファイルサーバーやNASが5年以上経過し、HDDの故障や容量逼迫が現実味を帯びてきた
  • テレワーク・出張・現場作業など、社外からのアクセス需要が増えてきた
  • ランサムウェアやサイバー攻撃のニュースを見て、自社の備えが心配になっている
  • 情シス担当が兼務で、運用負荷を下げたいと感じている
  • クラウドストレージは契約しているが、容量や運用が割高に感じている

ストレージは「動いているうちは見直されない」インフラの代表格です。しかし、故障や障害が起きてから動き始めると、選定にも移行にも時間が足りず、不本意な構成で5年を縛られることになります。余裕のあるうちに比較検討を始めることが、コストと安心の両立につながります。

まとめ

NAS vs クラウドストレージのまとめNAS vs クラウドストレージのまとめ

NASとクラウドストレージは「どちらが優れているか」ではなく「自社の規模・働き方・予算にどちらが合うか」で選ぶべきものです。本稿の試算では、10人規模ならNAS単体、30人規模ならクラウドメイン、50人以上ならNASメインのハイブリッドが、それぞれ費用対効果に優れる傾向が見えました。

ただし、純粋な金額比較だけでは見落としが残ります。社外アクセスへの対応、運用工数、ランサムウェア対策、将来の容量増加、廃棄コスト——これらを含めて5年スパンで考えると、判断はより立体的になります。

そして、どの構成を選ぶにせよ、別系統のバックアップは必須です。一つの基盤に集約しすぎると、その基盤が止まったときに業務全体が止まります。

自社の現状を棚卸しし、適切な選定と運用設計まで一気通貫で進めたい方は、ぜひ一度プロのパートナーに相談してみてください。社内のファイル共有基盤を、これからの5年に耐えうる形に整える——その第一歩を、いまから始めましょう。

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