一人目社内SEの採用面接で「スキル」を見抜けない経営者がハマる落とし穴

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一人目社内SEの採用面接で「スキル」を見抜けない経営者がハマる落とし穴一人目社内SEの採用面接で「スキル」を見抜けない経営者がハマる落とし穴

「ITに強い人が欲しい」だけでは、社内SEは採用できない

「うちもそろそろIT担当を一人置きたいんだけど、なかなか良い人が見つからなくて…」

中小企業の経営者からこうした相談を受けることが増えています。DXの必要性が叫ばれる中、自社のIT環境を整備したい、業務効率化を進めたいという思いから、初めて社内SE(情報システム担当)の採用に踏み切る企業は少なくありません。

しかし現実は厳しいものです。求人を出しても応募が来ない。やっと採用できたと思ったら、半年も経たずに「この会社では成長できない」と辞めてしまう。あるいは入社してみたら期待していた「ITの何でも屋」とは程遠く、特定の分野しかできない人だった——。

こうした失敗の根本にあるのは、実は経営者自身がITスキルを正しく評価できていないという問題です。

エンジニア採用コストは年々上昇し、一人を採用するのに100万円以上かかることも珍しくありません。人手不足倒産という言葉がニュースを賑わせる昨今、IT人材の確保は企業の存続に関わる経営課題となっています。

この記事では、一人目の社内SE採用で経営者が陥りがちな「スキルの見極め」に関する落とし穴と、その回避策について詳しく解説します。

なぜ多くの経営者が同じ失敗を繰り返すのか

実はこの問題、ITに詳しくない経営者ほど「自分は見抜ける」と過信してしまう傾向があります。

ある製造業の社長はこう語ってくれました。「面接で『サーバー構築できます』『ネットワーク設計やってました』と言われて、それなら大丈夫だろうと採用したんです。でも実際に入ってもらったら、うちの古いシステムには全然対応できなくて…結局、外部のベンダーに丸投げするしかなかった」

これは決して珍しいケースではありません。

IT業界の経験者であっても、「大企業のIT部門で働いていた人」と「中小企業で一人情シスをやっていた人」では、持っているスキルセットがまったく異なります。大企業では役割が細分化されており、ネットワーク担当はネットワークだけ、サーバー担当はサーバーだけを見ていることがほとんどです。

一方で、中小企業の一人目社内SEに求められるのは「広く浅く、何でもできる力」と「自分で調べて解決する力」です。この違いを理解していないと、スペック上は優秀に見える人を採用しても、現場でまったく機能しないという事態に陥ります。

さらに問題を複雑にしているのが、ひとり情シスの限界という構造的な課題です。たとえ適切な人材を採用できたとしても、社内にIT担当が一人しかいない状態では、その人に過度な負担がかかります。休めない、相談相手がいない、スキルアップの機会がない——こうした環境では、優秀な人材ほど早期に離職してしまうのです。

採用面接で「本当に見るべきポイント」は資格や経歴ではない

では、一人目の社内SE採用で失敗しないためには、何を見極めればいいのでしょうか。

結論から言えば、技術的なスキルよりも「問題解決のアプローチ」と「コミュニケーション力」を重視すべきです。

中小企業の情シスに求められるのは、最新技術への精通ではありません。「分からないことに直面したとき、どうやって解決するか」という姿勢と行動力です。社内の非IT部門のスタッフに対して、専門用語を使わずに説明できるコミュニケーション力も必須となります。

社内SE採用で見るべき3つのポイント社内SE採用で見るべき3つのポイント

採用面接で必ず確認すべき5つの質問

ここからは、IT知識がない経営者でも実践できる、具体的な面接での確認ポイントをお伝えします。

採用面接で確認すべき5つの質問採用面接で確認すべき5つの質問

1. 「前職で一番困った技術的なトラブルと、どう解決したか教えてください」

この質問で見るべきは、トラブルの難易度ではなく解決に至るプロセスです。

「上司に相談した」「ベンダーに問い合わせた」という回答が悪いわけではありませんが、一人目の社内SEとして採用するなら、自分で調べて仮説を立て、試行錯誤しながら解決に導いた経験があるかどうかが重要です。

「まずエラーメッセージで検索して、公式ドキュメントを確認して、それでも分からなければ技術コミュニティで質問して…」といった具体的なプロセスを語れる人は、未知の問題にも対応できる可能性が高いと言えます。

2. 「ITに詳しくない社員に、なぜパスワードを使い回してはいけないか説明してください」

これはコミュニケーション力を測る質問です。

技術的に正確な説明ができることは大前提ですが、それ以上に重要なのは「相手の立場に立って、分かりやすく伝えられるか」という点です。専門用語を並べ立てるだけの人は、社内での情報セキュリティ教育や、各部署との調整業務で苦労することになります。

3. 「当社のような規模の会社で、IT担当として最初の3ヶ月で何をしますか」

この質問への回答で、候補者が中小企業の実情を理解しているかどうかが分かります。

いきなり大規模なシステム刷新を語り始める人は要注意です。現実的な候補者であれば、「まず現状のシステム構成を把握する」「各部署の困りごとをヒアリングする」「優先度の高い課題から着手する」といった地に足のついた回答をするはずです。

4. 「5年後、どんなキャリアを描いていますか」

この質問は、早期離職のリスクを見極めるためのものです。

「マネジメントに進みたい」「特定の技術を極めたい」という志向自体は悪くありませんが、中小企業の一人情シスポジションでそれが実現できるかどうかは別問題です。

候補者のキャリアビジョンと、自社で提供できる環境にギャップがある場合、たとえスキルが合致していても採用は見送るべきかもしれません。情シスが辞める原因の多くは、この「期待と現実のギャップ」にあるからです。

5. 「分からないことがあったとき、誰にも聞けない状況だったらどうしますか」

一人情シスの覚悟があるかを確認する質問です。

「そういう状況は経験がないので分かりません」という正直な回答も悪くはありませんが、「まず公式ドキュメントを調べる」「技術ブログやQAサイトで類似事例を探す」「それでもダメなら有料でも専門家に相談する判断をする」といった具体的な行動指針を持っている人は、孤独な環境でも成果を出せる可能性が高いでしょう。

そもそも「採用」だけが正解ではない

ここまで採用面接のポイントをお伝えしてきましたが、正直に申し上げると、中小企業にとって「一人目の社内SEを正社員で採用する」こと自体がハイリスクな選択である場合も少なくありません。

エンジニア採用コストは人材紹介会社への手数料だけで年収の30〜35%、つまり年収500万円の人材なら150万円以上かかります。加えて採用活動にかかる時間的コスト、入社後の教育コスト、そして「合わなかった場合」のリスクを考えると、決して安い投資ではありません。

さらに、せっかく採用してもひとり情シスの限界に直面し、数年で退職されてしまうケースは後を絶ちません。人手不足倒産という言葉が示すように、人材確保の失敗は企業の存続に関わる問題です。

こうした背景から、最近では**「IT担当を自社で抱えない」という選択**をする企業も増えています。

具体的には、IT戦略の立案から日常的なヘルプデスク業務まで、必要な機能を外部リソースで賄うアプローチです。たとえば月額制自社DX推進部のような形で、自社専属のITチームを外部に持つことで、採用リスクを負わずにIT体制を構築する企業が出てきています。

採用とアウトソーシングの比較採用とアウトソーシングの比較

もちろん、外部リソースの活用がすべての企業に適しているわけではありません。自社の機密情報を外部に開示することへの抵抗感がある企業もあるでしょうし、長期的に見れば内製化のほうがコスト効率が良いケースもあります。

重要なのは、「社内SEを採用する」という選択肢だけに固執しないことです。自社の状況、予算、将来のビジョンを踏まえて、複数の選択肢を比較検討することをお勧めします。

こんな状況に当てはまる経営者は、今すぐ行動を

以下のような状況に心当たりがある方は、IT体制の見直しを検討すべきタイミングかもしれません。

  • 「PCトラブルのたびに業務が止まり、誰かが対応に追われている」
  • 「ITベンダーの言いなりで、提案内容の良し悪しが判断できない」
  • 「情報セキュリティ対策が後手に回っており、何から手をつけていいか分からない」
  • 「DXを進めたいが、社内に推進できる人材がいない」
  • 「過去にIT担当を採用したが、期待通りに機能しなかった経験がある」

IT人材の採用市場は今後さらに厳しくなることが予想されています。「いつか対応しよう」と先送りにしていると、いざ必要になったときには採用も外部委託もままならない、という状況に陥りかねません。

まとめ:スキルの見極めより大切なこと

一人目の社内SE採用で失敗しないためのポイントを整理すると、以下のようになります。

採用する場合に見るべきは、資格や経歴ではなく「問題解決のアプローチ」と「コミュニケーション力」です。 中小企業の情シスに求められるのは、幅広い業務に対応できる柔軟性と、自走して課題を解決できる力だからです。

そして同時に考えるべきは、そもそも正社員採用が自社にとって最適な選択なのかどうかという点です。エンジニア採用コストの高騰、ひとり情シスの限界、そして人手不足倒産のリスクを考えると、外部リソースの活用も現実的な選択肢として検討する価値があります。

まずは自社のIT課題を棚卸しし、本当に必要なのは「IT担当者という人」なのか、「IT機能というケイパビリティ」なのかを見極めることから始めてみてはいかがでしょうか。


ITに関するお悩みがあれば、まずは現状の棚卸しから始めましょう。 採用すべきか、外部を活用すべきか、その判断の前に「自社に何が必要か」を明確にすることが、失敗しないIT体制構築の第一歩です。

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